地球の悲鳴が聞こえるか
●大江健三郎『万延元年のフットボール』講談社文芸文庫
●西尾維新『悲鳴伝』講談社ノベルス
●西尾維新『アニメ『化物語』副音声副読本(上)』講談社BOX
●上遠野浩平『騎士は恋情の血を流す』富士見書房
うん、『悲鳴伝』はよかった。
「理論上悲しむべきなのに、事実上悲しめない」、「社会的道徳と自分の感覚との真っ向からの食い違い」があるひとの話。西尾維新が初期から扱ってきたテーマではあるけど、『少女不十分』や『猫物語』ではとく意識的にとりあげられていて、今回もその流れかなあと思う。
ただ『少女不十分』だとそうした子供はあくまで不幸で、救われるべきものとして描かれていたのに対して、『悲鳴伝』では新しいアプローチが試みられていた。というか新しすぎる。こんなに長い小説(しかもヒーローもの)なのに、主人公の変化がまるでない。成長も改心もない。戯言シリーズの前半もこういう感じだった気がする。
とはいえ「まったく新しいタイプの主人公」とあるし、いろいろ想像しながら続きを待ちたい。続編あるんだよね? また一つ西尾維新作品に続編待ちのシリーズが増えることに。