『君が僕を』読了

 ●ムージル『愛の完成・静かなヴェロニカの誘惑』古井由吉訳、岩波文庫
 古井は訳者からの言葉として「愛の完成」を「姦通小説であった」と端的に述べる。そして出来事としては単純極まりない、言ってみれば些細なことしか起こらないのにも関わらず、「愛の完成」がどうして長々と書かれているのかを説明するために次のように推論する。「おそらく、観念と感情とが、超越的なものへ向けて、いちじるしい増殖を見たのだろう」、と。
 これはムージルの文章が超越的なものの周りをぐるぐる回っているということで、実際そこに書き連ねられているのは内省に次ぐ内省だ。しかも内向きに考えるのではなくて、他者によって筋道付けられている内省。
 それは良いのだけど、内省が女性のものである点は気にかかる。一切が終わった後で無価値だと明かされるためだとしても、姦淫によって肉的な部分を通過するのがつねに女性主人公であるというのは、どうしても受け入れがたい。
 ●中里十『君が僕を』3・4、ガガガ文庫
 4巻で完結。これも内省的で他者論的な小説だと思う。そのうえ百合なので、趣味ではあるんだけど、良く分からなかったり納得いかない部分があるので後日別のエントリを書くつもり。多分。
 ●『吉岡実詩集』現代詩文庫
 硬質でとっつきにくい印象を受ける。あまり日常では用いられない名詞を繋ぎ合わせたような。ただ「ポール・クレーの食卓」は何だか気に入ったし、短歌は引き締まっていてとても良かった。
 ↑何か偉そうだな…。すみません。
 
 まどかマギカは一貫してほむら×まどか推しです。ミーハーと呼ばれようとこれだけは譲れない。