地震について

フロイト精神分析入門(下)』高橋義孝・下坂幸三訳、新潮文庫
鴨長明方丈記川瀬一馬校注・現代語訳、講談社文庫
 方丈記は原文でもそれほど難しくなくて案外読めてしまった。とても短い文章だし。
 元暦二年(1185年)の大地震について書いてある箇所も短いのだけど、その前の飢饉や火災の話と比べてもなお一層恐ろしく、とんでもない規模だったことが伝わる。
 それだけの地震なのでしばらくは「人皆あぢきなきことを述べて、いささか、心の濁りも、うすらぐとみえしかど」という具合なんだけど、それでも時間が経てば口に出す人もいなくなってしまったとか書いてある。これはちょっと不安になってしまうよね。
 もちろん今は原発があって人災としての側面があるから、当分は忘れられないとは思う。でも他人を槍玉にあげることで地震について考える機会を失ってしまう可能性があることには、十分自覚的でありたいなあ、とか。